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修理事例 セルフダイアグノーシス

自動車に搭載されているエンジンやトランスミッションにはもちろん、

エアコン、サスペンション、その他のデバイスは

コントロールユニットと呼ばれるコンピューターによって制御されています。

これらのコンピューターには各種センサーが接続されており、

そのセンサーからの信号入力によりコントロールユニットが演算を行い、

個々のデバイスが最適に動作するよう制御します。

このコントロールユニットにはセルフダイアグノーシス機能と呼ばれる自己診断能力が備わっており、

各種センサーやアクチュエーターが故障すると、運転者にそのことを知らせ警告します。

簡単に言うと、突然メーターパネルに点灯する警告灯のことです

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 この自己診断装置、自分自身を自分で壊れてますと申告するのだがどうも信用できないシステムです。

 先日、エンジンチェックランプが点灯し、エンジンが不調であるというポルシェが入庫しました。

 不調の内容はアクセルを踏み込んでも加速しない、エンジンが吹けない、

3速のギアポジションの時なかなか変速しない。というものです。

自己診断装置が告げるのはO2センサーの故障。

が、しかし、O2センサーが壊れたからといってこのような症状にはなりません。

 O2センサーは排気ガス中に残存する酸素の量を検知するセンサーで、

酸素の残存量が多いときは燃料を増量補正し、

少ないときは減量補正する。

そうです、単なる補正を行うだけのセンサーで、

なるべく排気ガスが汚くならないようにするための補助的な役目をしているだけなので、

ものすごく不調を起こすということはありません。

しかしながら、自己診断装置はO2センサーの故障を訴えている。

なぜ、そうなるかをよく考えてみた。

まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」方式でO2センサーが異常信号を出していたのです。

この状態で排気ガスの濃度を測定してみると

一酸化炭素、炭化水素ともにゼロです。

ゼロという状態で、不調はあり得ません。

ゼロということは完全燃焼を表しているからです。

完全燃焼しているにもかかわらず、エンジンが不調なわけは?

そしてO2センサーが異常と診断されるわけは?

・空気の流入量を間違っていて計測値よりも実際は多く流入している

・アクセルの踏み込み量を実際よりも少なく検知している

 ということが考えられるので、それぞれを点検してみました。

するとエンジンが吸入する空気の流入量を計測する装置がボケていて誤作動していることが分かりました。

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 実際の流入よりも少なくしかコントロールユニットに申告していないため、

コントロールユニットは燃料を少しだけしか出してやりません。

そのため完全燃焼はしているのですが、燃料がちょびっとなので加速不良を起こしていたのです。

そして酸素の量が多すぎる状態が続き、O2センサー異常と判定しエンジンチェックランプが点灯したのです。

 実際に壊れてる装置を知らせないで関係の無い装置を知らせてしまうなんて傍迷惑な自己診断装置ですが、

ホントこんなもんです。自動車の修理にもまだまだ職人の勘と経験は必要です。

  • 2015.04.15
  • 修理事例