その他 スバル サンバー KV4エンジン不調
1996 SUBARU SAMBER 175,776km
走行時ひどいエンジン不調を起こすことがある。
と、いうことで入庫しました。
とても大事にしているのでまだまだ整備して乗りたいとのご要望です。
入庫時は多少のばらつきはあるものの年式なりの調子かな、
というような印象だったので症状確認のためお客様に運転していただいて試運転に出かけました。
10kmほど走行して、信号待ちの時に症状が確認できました。
停車時のアイドリングで大きく回転が落ち込み、
それを検知しISCVが回転維持のためバルブ通路を拡げると
回転数が上がりすぎて、さらに制御のために回転を下げると、回転が下がりすぎる。
いわゆるハンチングという現象ですが、規則正しくない印象です。
ISCVバルブ周辺に問題がありそうですが、どうもそれだけでは無いようです。
症状も確認できたので工場に戻って、
アイドリングさせたまま今後の整備方針についてお客様と相談していると
失火しているかの様な不調が現れました。
信号待ちで確認した症状とは違うので原因は複数あり、
条件により複合して発現するということを、お客様に説明して、
点検を進めながらの整備となることにご了解いただき、
お預かりすることとしました。
お預かり後私が試運転した結果以下の様な不具合を感じました。
・スロットルパーシャル時の緩いノッキング音
・エアコンコンプレッサー作動時のアイドリングでラフアイドル
・エアコンコンプレッサーオフ時のアイドリングで時々ミス
・2速高回転時にレブリミッターが作動した様な現象
・加速時に一つ上のギアを使っているかの様な力不足感
・長時間アイドル後に多量の白煙
などが確認できました。
24年前の車両ですが、幸いなことにECU制御エンジンなので
ダイアグノーシスコードが記憶されていないか点検してみることにしました。
運転席足元の黒いカプラを接続するとメーター内にランプが点滅してコードを読み取る仕組みです。
読み出したコードは「23」で「圧力センサー」からの情報に不具合があることを示している。
部品は生産終了で供給がありません。
しかし、センサーの特性がズレている可能性はあるけど、
二次空気などを吸い込んでいてセンサーが異常を検知することもあるので、
その辺りから点検してみました。
インテークマニフォルドにつながっているバキュームホースから点検すると
4WD切り替えのソレノイドバルブに接続されているに触れるとエンジンの調子が変わることが確認できました。
取り外して目視点検をしても硬化しているくらいでヒビや裂けは認められませんが、
症状が発現することから念のためバキュームホースを交換しました。
交換してから試運転すると
・スロットルパーシャル時緩いノッキング音
・2速高回転時にレブリミッターが作動した様な現象
・加速時に一つ上のギアを使っているかの様な力不足感
上記3点については症状が無くなりました。
ホースが硬化して硬くなりパイプとの密着が悪くなって二次空気を吸い込んでいたのでしょうか…..
しかし、
・エアコンコンプレッサー作動時のアイドリングでラフアイドル
・エアコンコンプレッサーオフ時のアイドリングで時々ミス
・長時間アイドル後に多量の白煙
などの症状は残っており、更なる点検が必要です。
次はISCVの点検です。
見たところ新しいので記録簿を確認してみると、
最近交換された記録が残っており、交換後1,000kmしか走っていません。
当店に入庫する前に同じ症状での修理を依頼した工場で交換した様です。
部品を交換しても症状が改善しないので当店に持ち込まれた様です。
そういう訳でISCVは新品に交換済なので部品そのものに問題は無いと思われます。
ところが、症状はISCVも関連している様なので念のため取り外して点検すると
取り付け部のマニフォルド側にびっしりとカーボンが付着していました。
このカーボンを除去して組み付けると
・エアコンコンプレッサー作動時のアイドリングでラフアイドル
が改善しました。
しかしながら
・エアコンコンプレッサーオフ時のアイドリングで時々ミス
・長時間アイドル後に多量の白煙
これらがまだ残っています。
どうやらこちらが本丸で簡単にはすみそうもありません。
お客様に了解をいただきシリンダーヘッドカバーを取り外しての点検です。
ヘッドカバーを外すと汚れて酸化生成物が堆積しているところと、
明らかに除去されたであろうところが見受けられます。
以前に対応した整備工場が施工したのでしょうか?
分解を進めると………
3番のエキゾーストバルブガイドがシリンダー側に引き込まれています。
下写真をご覧ください。左が正しい位置、右が異常な位置です。
一方バルブはどうなっているでしょうか
バルブガイドがシリンダ側に埋没した分だけ
他のバルブと比べて下の部分にカーボン堆積による段付きができていました。
バルブステムシールも機能しなくなりオイルをここから吸い込むことで白煙が生じていたと予測できます。
どうしてこんなことが起こったのか不明ですが原因はわかりました。
新しいシリンダーヘッドとバルブが届く間に、
ピストンのカーボンを除去して
ヘッドカバーも
きれいにして
そうこうしている間に届いたバルブを
新しいヘッドにすり合わせて
組み付けてエンジンをかけると
残っていた
・エアコンコンプレッサーオフ時のアイドリングで時々ミス
・長時間アイドル後に多量の白煙
の症状も改善し快調なエンジンが復活しました。
全ての不具合症状が改善したのでこれまで以上に愛着が湧いて末長く大事乗っていただけると嬉しいです。
不具合の原因が複合しており、原因究明には時間がかかりましたが完治してよかったです。
- 2020.05.27
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